買収後100日計画の前に、最初の30日で確認すること

M&Aでは、買収後100日間の行動計画を「100日計画」として整理することがあります。

しかし、小規模会社では、最初から詳細な計画を作っても、その前提となる情報がそろっていないことがあります。

今月の支払はいくらか。請求書は誰が発行しているのか。重要な契約はどこにあるのか。売り手社長がいなくても、会社は動くのか。

こうしたことが分からないまま制度や業務を変えれば、必要な支払や日常業務を止めるおそれがあります。

最初の30日で行うのは、大規模な改革ではありません。会社を止めず、中で起きていることを見えるようにし、その後の改善を管理できる状態へ移すことです。

なお、30日は一つの目安です。会社の規模や管理状況に応じて、確認の順序や期間は変わります。

クロージング当日:止めてはいけない業務を確認する

買収直後は、止まった場合の影響が大きい業務から確認します。

代表的なものは、給与、仕入代金、家賃、税金、借入金返済などの支払と、売上の請求や入金確認です。

預金残高だけでなく、直近の入出金予定、支払日、請求日を確認します。あわせて、通帳、印鑑、インターネットバンキングなどを誰が管理し、誰が支払を判断しているかを把握します。

売り手社長が行っていたという理由だけで、その業務や権限を直ちに止めるのは危険です。まず現在の流れを維持しながら、買い手が確認できる状態を作ります。

3日以内:情報・人・権限の所在を確認する

次に、会社を動かすために必要な情報を誰が持ち、誰が判断し、誰が実行しているかを確認します。

対象は会計資料だけではありません。契約書、給与・勤怠情報、許認可、保険、顧客情報、パソコン、メール、クラウドサービスなども含まれます。

確認する内容は、次の3点に整理できます。

  • 情報がどこにあり、いつ更新されているか
  • 実際の業務を誰が行っているか
  • 閲覧、変更、承認などの権限を誰が持っているか

資料が存在しない場合も、それが判明すれば対応できます。危険なのは、資料や管理者がいないこと自体を、買い手が把握していない状態です。

1週間以内:課題を一つの表にまとめる

買収前の財務DDで見つかった問題や未確認事項は、買収後の対応へ引き継ぎます。

ただし、課題はDD報告書に記載されたものだけではありません。買収後に帳簿、資料、現場を確認して初めて分かる問題もあります。

発見された経緯にかかわらず、対応が必要な事項を一つの課題表へまとめます。それぞれについて、少なくとも次の内容を決めます。

  • 何を確認または是正するか
  • 誰が担当するか
  • いつまでに対応するか
  • 何を確認できれば完了とするか
  • その後も継続して確認する必要があるか

課題の金額や数だけでなく、事業の継続、資金流出、法令違反、売り手社長の退任による影響を踏まえて、優先順位を決めます。

2週間以内:暫定的な管理を動かす

最初の30日で、完成した管理制度を作る必要はありません。

一方で、「今後検討する」としたまま、従来どおりの管理を続けるだけでは、買い手が会社を管理できるようにはなりません。

まず、当面必要な管理方法を決め、実際に動かします。

  • 支払を誰が承認するか
  • 資金予定を誰が更新するか
  • 経理資料をいつ集めるか
  • 月次数値を誰が作るか
  • 重要な問題を誰へ報告するか
  • 売り手社長から何を引き継ぐか

最初から精緻な資料を数多く作るより、資金、売上、利益、売掛金など、会社の大きな変化に気づくための情報を継続して集めることが重要です。

一度運用してみることで、情報不足や担当者の不在、権限の未移管も明らかになります。

30日以内:変える・残す・継続確認に分ける

買収した会社の仕組みは、すぐに変えるもの、当面残すもの、状況を確認しながら判断するものに分けます。

目前の資金不足、重大な法令違反、支払権限の不備など、放置した場合の影響が大きい問題は早急な対応が必要です。

一方、会計ソフト、給与計算、請求方法、組織、取引先との関係などを一斉に変更すると、情報が途切れたり、現場が混乱したりすることがあります。

非効率に見える仕組みにも、それが続いてきた理由があるかもしれません。緊急性が低いものは、他の業務への影響を確認してから変更します。

何を変えるかだけでなく、何を当面残すかを決めることも、買収直後の重要な経営判断です。

最初の30日で目指す状態

最初の30日で、PMIを完了させる必要はありません。

目指すのは、次の状態です。

  • 当面の資金と支払予定を確認できる
  • 日常業務を止めずに継続できる
  • 重要な情報、人、権限の所在が分かる
  • 売り手社長に依存する業務が見えている
  • 対応すべき課題に担当者と期限がある
  • 未確認事項が一覧になっている
  • 買い手が次に何を優先するか判断できる

最も重要なのは、買い手が「この会社で今、何が起きているのか」を説明できることです。

その状態ができて初めて、100日計画は実行可能な計画になります。100日計画は、見えない会社を想像で変えるためのものではありません。確認した実態をもとに、何を、誰が、どの順番で整えるかを決めるための計画です。

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