スモールM&Aの100日プラン―担当者・期限・会議体まで決める実行表

会社を買収した直後には、従業員への説明、売り手社長からの引継ぎ、資金管理、月次決算、取引先対応など、複数の課題が同時に発生します。

スモールM&Aでは、PMIの専任部署がなく、買い手の経営者が通常業務と並行して対応することも少なくありません。思いついた順に処理していると、緊急性の高い問題や、担当者の決まっていない問題が後回しになります。

そこで作成したいのが、買収後の100日プランです。

100日プランは、単なる「やることリスト」ではありません。課題ごとに担当者、期限、報告先、完了条件を決め、買収後の対応を実際に動かすための管理表です。

100日でPMIを終わらせる計画ではない

100日という期間は、PMIをすべて完了させる期限ではありません。

中小企業庁の「中小PMIガイドライン」では、PMIの集中実施期をM&A成立後概ね1年間としています。その中でも、推進体制の構築、関係者との信頼関係、買収した会社の現状把握などは、特に買収後100日までを目安に集中的に行う事項とされています。

100日間で目指すのは、会社を一気に変えることではありません。事業を安定して継続し、重要な問題を把握して、その後の改善を管理できる状態をつくることです。

まず現状を確認して、5つの領域に整理する

買収前にデュー・ディリジェンス(DD)を行っていても、買収後に帳簿や現場を確認して初めて分かることがあります。

最初の30日程度で実態を把握し、見つかった課題を次の5領域に整理します。

領域 主な確認事項
経営・権限 経営方針、契約、採用、値決め、支払いなどの決定権限
人・組織 従業員説明、個別面談、キーパーソン、退職リスク
会計・資金 預金、入出金予定、月次決算、売掛金、在庫、借入金
業務・取引先 属人化した業務、主要顧客、仕入先、口頭の約束
DD指摘事項 買収後に是正する事項、継続監視する事項、追加確認事項

最初の30日で行う現状確認については、別記事「100日プランを作る前に―買収後最初の30日で確認すること」で詳しく説明しています。

課題ごとに担当者と完了条件を決める

課題名だけを並べても、対応は進みません。

100日プランには、最低限、次の5項目を記載します。

  • 課題
  • 担当者
  • 期限
  • 報告先
  • 完了条件

たとえば、「月次決算を早くする」だけでは、いつ完了したと判断するのか分かりません。

「経理担当者が翌月20日までに月次試算表を作成し、買い手経営者へ提出する。3か月連続で期限内に提出できた時点で初期対応を完了とする」とすれば、進捗を確認できます。

小規模な案件では、買い手経営者がPMI責任者を兼ねることがあります。ただし、すべての作業を経営者自身が行う必要はありません。

実際に作業する人、全体を管理する人、重要事項を決定する人を分け、課題が止まったときに誰が判断するのかを明確にします。

週次と月次で進捗を確認する

100日プランは、作成後も更新します。

買収直後の週次会議では、期限を過ぎた課題、新たに判明した問題、従業員や取引先の反応、直近の入出金、買い手側の判断が必要な事項を確認します。

月次会議では、売上、利益、資金、予算との差異、主要顧客、人員の変動など、会社全体の状況を確認します。

会議を報告だけで終わらせず、決定事項、担当者、期限を100日プランへ反映することが重要です。

30日・60日・100日で何を確認するか

会社の状況によって変わりますが、次の区切りが一つの目安になります。

30日まで

  • 事業と資金が継続できるか確認する
  • 従業員や主要取引先へ必要な説明をする
  • 緊急性の高い問題へ対応する

60日まで

  • 月次決算と報告体制を整える
  • 権限、業務分担、属人化した業務を把握する
  • DD指摘事項への対応を進める

100日まで

  • 初期課題の進捗と効果を確認する
  • 売り手社長からの引継ぎ状況を評価する
  • 未完了事項を中長期の計画へ移す

日数を形式的に守ることより、事業の継続に影響する課題から優先することが大切です。

すぐに変えることと、待つことを分ける

支払権限の不備、重大な法令違反、許認可上の問題、目前の資金不足などは、早急な対応が必要です。

一方、給与・評価制度、長年の業務手順、取引先との関係、組織、システムなどは、事情を確認せず変更すると、従業員や取引先の反発を招くことがあります。

従来の方法が非効率に見えても、その方法が採用された理由があるかもしれません。緊急性のない事項は、まず実態と影響を確認してから変更を判断します。

まとめ

スモールM&Aの100日プランは、大掛かりな資料である必要はありません。

ただし、課題名だけを記載した一覧では、実行管理には使えません。課題、担当者、期限、報告先、完了条件を定め、週次・月次の会議で更新します。

100日目はPMIの終了日ではありません。初期対応を振り返り、残った課題をその後の計画へつなぐ確認日です。

買収後の現状確認、100日プラン、月次管理、資金繰り、売り手社長からの引継ぎなどを買い手だけで整理することが難しい場合には、会社の状況に応じて外部専門家の支援を受ける方法もあります。

スモールM&AのPMIでは、何から着手すべきか整理できていない段階からご相談いただけます。

参考資料

中小企業庁「中小PMIガイドライン~中小M&Aを成功に導くために~」

執筆:貝井 英則(公認会計士・税理士)

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