1.事業が止まらない
直近の入出金、給与、請求、取引先対応を確認し、買収直後も事業を継続できる状態を守ります。
PMIとは、Post Merger Integrationの略で、M&A後に買収した会社を新しい経営体制のもとで運営していくための取組みです。
一般には、経営方針、組織、業務、会計、人事、システムなどを統合することを指します。
ただし、小規模会社の買収では、制度を統合する前に確認しなければならないことがあります。
会社の状況が数字で見えるか。今後の入出金を把握できるか。誰がどの業務を行っているか。重要な情報や権限が売り手社長だけに集中していないか。
小規模PMIでは、まず会社を止めず、実態を把握し、買い手が継続して管理できる状態を作ります。
小規模会社では、売上や利益が月次で分からない、資金繰りを社長だけが把握している、契約書や重要資料の保管場所が決まっていないといったことがあります。
請求、支払、顧客対応、従業員への指示なども、売り手社長の記憶や個人的な関係によって動いている場合があります。
この状態で組織や制度だけを変更しても、会社の実態を把握できなければ、買い手は適切に判断できません。急いで従来のやり方を変えることで、これまで動いていた業務を止めてしまうおそれもあります。
そのため、小規模PMIでは、既存の業務を維持しながら、数字、資金、業務、権限、人の状況を確認します。そのうえで、特定の人の経験や記憶に頼る経営から、買い手が状況を把握して判断できる経営へ移していきます。
大企業のPMIでは、買収する側にも買収される側にも、経理、人事、法務、情報システムなどの担当部門があることを前提に進めることがあります。
小規模会社では、専任の管理担当者がいないことも珍しくありません。担当者がいても、重要な情報や最終的な判断は社長に集中している場合があります。
必要な資料や仕組みが最初から揃っているとは限らないため、一般的なPMIの手順をそのまま当てはめることはできません。
まず、会社が現在どのように動いているのかを確認します。既存のやり方をすべて否定するのではなく、残すもの、改めるもの、新たに作るものを分け、優先順位を付けて整えます。
直近の入出金、給与、請求、取引先対応を確認し、買収直後も事業を継続できる状態を守ります。
通帳、印鑑、契約書、アカウント、パスワードと承認権限の所在を明らかにします。
特定の人だけが持つ情報、判断、業務を、必要な資料と担当者に結び付けます。
誰が何を作り、いつ確認し、買い手へどう報告するかを決め、変化に気づける状態にします。
最初からすべてを完成させる必要はありません。会社を止める可能性がある問題や、資金流出につながる問題など、危険度の高いものから順に対応します。
月次決算は、小規模PMIの重要な到達点の一つです。しかし、会計ソフトへ数字を入力し、試算表を作るだけでは十分ではありません。
売上や費用の資料がどこから集まるのか。入出金を誰が把握するのか。支払を誰が承認するのか。数字が大きく変わったときに、誰が理由を確認し、対応を決めるのか。
数字を経営判断に使うためには、数字が作られる業務、その数字を確認する人、判断する人まで決める必要があります。
小規模PMIでは、月次決算や資金繰りだけでなく、請求、支払、契約、承認権限、情報管理、業務分担などを関連づけて確認します。
会計上の数字と会社の実際の動きを切り離さずに整えることが、継続して管理できる会社を作るために重要です。